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チェルノブイリのジレンマ スベトラーナ・ジャーチェル(女)

チェルノブイリのジレンマ スベトラーナ・ジャーチェル(女)
 第二中等学校

 五感では感じられない放射能は、宇宙、放射性鉱物(※)、その他から発生する。放射性物質が崩壊し、崩壊した粒子が細胞に侵入し、細胞に構造的変化をきたす。これが被曝である。


※放射性鉱物
 核燃料になるウラン235など。

 チェルノブイリの町がつくられたのは、コロンブスのアメリカ到達の3百年前、ビョートル一世(※)によるロシア帝国成立より5世紀も前のことだった。8百年の間、この町とその郊外に住む人々はライ麦やヒエを栽培し、牛や豚を育てた。かつてナポレオンやヒトラーがこの土地の占領を企てたが、計画は失敗した。飢餓や、敵の侵攻、ペストやコレラの流行にも打ち勝ち、厳しい冬をも生きぬき、チェルノブイリの人たちは自らの大地を守り通した。

※ビョートル一世
 19世紀のロシア皇帝

 現在、チェルノブイリは事実上からっぽで、打ち捨てられ、人のぬくもりはなく、ものを言わぬ森が周りを囲むだけである。人類史上最悪の原子力事故によって避難させられた村や町179の内のひとつとなった。

 6つの原子炉を持つチェルノブイリ原子力発電所の建造はソビエト原子力エネルギー政策の誇りであった。1号炉は1977年に完成。2、3、4号炉はそれぞれ1978、1981、1983年に完成した。5号炉と6号炉は1988年に操業を予定していた。チェルノブイリ原発は、核反応を遅らせるために使われていたのが黒鉛であり、水ではなかった。そのために、冷却システム(※)の破壊の際に、原子炉が統制できなくなる危険性が多かった。また原子炉自体は、厚い防護壁に囲まれていたが、鉄筋コンクリートの防護用のドームがなかった。


※冷却システム
 炉心が溶けないように冷やすシステム。

 事故に結びついた実験は、1986年4月25日の朝、始められた。以前からの計画にしたがって、4号炉を停止し実験を行う予定だった。

 この実験は停電で電気供給が止まった場合でも、原子炉の余熱で発電機タービンを動かし、原子炉の冷却水ポンプを作動させるのに何分かかるかを明らかにするためのものであった。

 1986年4月26日、タービンへの蒸気の供給がストップ、それとほとんど同時に、冷却水ポンプの作動が遅れはじめ、原子炉の制御棒(※)に入る水流が急激に減る。原子炉自動停止装置(※)のスイッチは、その時切られていた。短時間で原子炉内の温度が急上昇し、誘導反応が止まってしまう。そして1時23分、チェルノブイリ原発第4号炉で、あの大事故。3秒の間隔をおいて2度の大爆発。最初の爆発は水蒸気の過剰な圧力によるもので、2回目のは、あとに生じた水素ガスによるものだと言われている。燃料棒(※)のジルコニウム(※)でつくられた外皮がとけはじめ、炉内の高圧の水と反応、瞬時に燃料棒は粉々となり、数千トンもある原子炉のカバーは吹き飛び、屋根も突き破ってしまう。死をもたらす巨大な黒雲が上昇していく。


※制御棒
 原子炉そのものや関連システムにトラブルがあったとき、自動的に制御棒を挿入して、中性子を吸収させ、核分裂を止める仕組みになっている。

※自動停止装置
 原発には何らかの異常があると、自動的に停止する機能がある。

※燃料棒
 原子炉に使用される核燃料は、ウラン235を濃縮して円柱棒状に生成している。

※ジルコニウム
 燃料棒は、ウラン235を濃縮したもの数百個を、ジルコニウムを含んだ合金の筒に収めたものである。

 事故当時、チェルノブイリ原発には、176人が勤務していた。しかし、一番被害を受けたのは消防士だった。チェルノブイリの惨事はその地獄の灰で私たちの心を焼き続けている。それは、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの国境地帯、地球全体を不意に襲った。

 恐ろしい不幸の出現という鮮烈な記憶は、いつまでも私たちをおびやかし続ける。この悲劇に終わりはない。それでも私たちは希望を胸にすべての報道をすみからすみまで読む。チェルノブイリの真実を知るために。そしてすべてがもう過去になったのだと確信したいがために。

 人はときに自分をだましたい時がある、生きていくために、自分に嘘をつく。だがそうすることは、チェルノブイリを再び生みだす可能性があるということなのだ。

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子供たちのチェルノブイリ

Author:子供たちのチェルノブイリ
昔、こどもたちのチェルノブイリの作文集を選ぶボランティアをしました。この時の衝撃は今も心に残っています。
 連絡先
 ohanamoon@gmail.comまで

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