スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スベトラーナちゃん ニーナ・ラゴダ(女・16歳)

スベトラーナちゃん ニーナ・ラゴダ(女・16歳)
 スターロ・ビソツカヤ中等学校11年生 エリスク地区

 あれは4月のことでした。公園の木々にはつぼみがふくらみ、白樺やハシバミの木には、もう花穂が下がっていました。草は太陽にむかって伸び、きれいな空気はきらめき流れていました。青空高くヒバリが喜びの声をあげ、鳥たちは春のおとずれを喜んでいました。

 隣のステパーノフさんの庭が、楽しく、にぎわっています。アコーディオンが奏でられ、人々の楽しい声も聞こえてきます。ダンスが続き、また歌も続くといったふうにです。外は春で、ステパーノフさん夫妻(ユーリーとバレンチーナ)の心も春なのです。二人に、待ちに待った第一子が、ついに生まれました。一番の喜びである娘が。この喜びと楽しみのパーティは、娘のスベトラーナちゃんの誕生のためだったのです。幸せいっぱいのこの夫婦が、彼女のために家でパーティを開いたのです。二人は、神様がくださった自分たちの血を分けた子どもに見とれ、見飽きることがありませんでした。夫婦の顔は輝き、幸せな笑みが、ずっと浮かんでいました。私たち子どもは、赤ちゃんのベッドを離れられませんでした。そこには、レースの飾りのついた服を着たふっくらしてばら色のほっぺの赤ちゃんが寝ていて、寝ながら小さな口をおかしくちゅっちゅっといわせているからです。だけど、おばさんたちは赤ちゃんにいやなことが降りかかってこないようにと私たちを追っ払ってしまいました。村の全員が、私たちのスベトラーナちゃんの世話をしました。誰でもが彼女を抱きたがり、彼女と遊びたがったりしました。誰もが彼女の「アグー」という初めての言葉を聞きたがったのです。

 ところがとうとうおばさんたちが気にしていたようなことが起こってしまいました。私たち子どものせいではありませんでしたが。私たちのかわいい小さなスベトラーナちゃんが病気になってしまったのです。

 スベトラーナちゃんが1歳になったとき、不幸が彼女を襲いました。暗黒のチェルノブイリが、スベトラーナちゃんの小さな体を、重病にさせてしまったのです。両親が病院や診療所を渡り歩く生活が始まりました。つい最近まで幸せだった夫婦の顔は生気を失い、石のようでした。私たちの心臓は、重たい石がのしかかったようになってしまいました。

 私はいま16歳です。学校を卒業します。私は初めて恋をしました。そのワーシャと私は同じ学校に進むことを約束しました。私の恋は片思いではありません。

 だけど、完全に幸せだと感じるには、何かが不足しているのです。私の目の前には、隣の家の薄暗い窓や、スベトラーナちゃんのお母さんの涙の跡のある顔がたえず浮かんできます。夜、私は不眠症で悩んでいます。私は不幸なスベトラーナちゃんが3回も受けた大きな複雑な手術のこと、打ち克つことのできない彼女の重い病気のことをいつも考えてしまうのです。私は人間の苦悩の意味について悩んでいます。

 また悪い知らせがありました。スベトラーナちゃんのもう片方の目にも悪性の腫瘍が見つかりました。神様、あなたはこの世にいるのですか。なぜこの何も罪のない赤ちゃんにこのような苦しみを与え、なぜこの優しい、働き者の両親にこのような厳しい試練を与えるのですか。

 あざやかな花がさきほこっている青々とした草原の夢を見ました。私とワーシャは手を取り合い、草原を走っています。私たちの前にはスベトラーナちゃんがいます。彼女に追いつこうとするけど、どうしても追いつけません。彼女の手には、カミツレの花束があります。彼女は逃げながら、振り向いては私たちをからかっています。そこに突然、口から火を吹く毛むくじゃらの怪物が丘に現れ、スベトラーナちゃんに黒い手を伸ばし、捕まえてしまいました。私たちはこわくなって、「スベトラーナちゃん。スベトラーナちゃん」と叫んでいました。しかし、返ってくるのは沈黙だけです。草原は、突然灰で襲われ、空には暗い黒雲が現れました。その雲のうえには、たくさんの子どもがのっています。彼らは私たちに手を振っているのですが、別れなのか手招きなのかは私にはわかりません。

 冷や汗で目が覚めると、心臓が激しく打っていました。朝、恐ろしい知らせが届いたのです。私たちのスベトラーナちゃんの命が燃え尽き、永久に消え去ったとのことでした。

 神様。寛容な神様。私は生きたい。愛し、愛されたい。私は不幸やとめどもない涙なんていやなのです。生気のない窓や石のような顔など見たくもありません。私は「黒い」「黒色」そして「チェルノブイリ」といった言葉は嫌いです。嫌いだし、とても恐れているのです。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

子供たちのチェルノブイリ

Author:子供たちのチェルノブイリ
昔、こどもたちのチェルノブイリの作文集を選ぶボランティアをしました。この時の衝撃は今も心に残っています。
 連絡先
 ohanamoon@gmail.comまで

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。