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僕のコウノトリはどこにいるの バーベル・チェクマリョフ(男)

僕のコウノトリはどこにいるの バーベル・チェクマリョフ(男)
 第一中等学校8年生 ドゥブルシ町

  飛んでいく 渡り鳥が
  遠い秋の青空を

 鳥が、耳をつんざくような別れの鳴き声をあげて飛び去るのを見ると、僕はいつもこのミハイル・イサコフスキーの歌詞を思い出す。そして、僕はなにか寂しさを感じる。

 だけど春になって彼らが自分の巣に戻ってくると、僕はこの羽をもったお客さん一人ひとりにキスをしたくなるのだ。

 村のはずれにレンガづみの高い煙突がある。ずっと昔に全焼してしまった農家に残っていたものだ。僕の生まれたころにはもうすでに、その墓標のような煙突だけがそこにあった。この煙突のうえに、巨大なキノコの形をした帽子のように、コウノトリの巣があった。コウノトリは草原を堂々と歩き、また、道に静かに立ち止まっては、何か考え込んでいるように見える。「コウノトリは哲学鳥だ」と僕たちの先生は言っていた。

 僕の父は魚釣りが好きだ。夜に釣り道具を準備し、夜明けに、湖にでかける。その日、僕はどうしても父と一緒に行きたくなって、連れて行ってもらうために、一晩中寝ないでいた。そして明け方、父の運転するオートバイに乗って出かけた。コウノトリの巣のそばを通りかかったとき、コウノトリはもう赤い足で草原を歩きまわっていた。

 霧がかかった湖は、何て気持ちがいいんだろう。葦や青い柳はまだ眠り込んでいるみたいだ。一枚の葉さえ、そよいでいない。

 やがて僕たち二人は、黄金色に輝くたくさんのフナを針金にとおし、それを手に得意げに家に帰った。たまらなく暑い日だった。巨大な夏の熱い太陽が満天に燃えているかのようだった。この輝きが災いをもたらしたのである。

 このような太陽を今まで一度も見たことがなかった。僕はこの最後の魚釣りを一生忘れないだろう。

 奇妙なことだ。僕は太陽が好きだった。寒いとき、湿っぽいとき、いつも太陽を心待ちにしていた。しかし、今は、太陽が空に大きく、鮮やかに輝くのを見ると、恐ろしさを感じ、ぞっとするようになった。一人ぼっちになってしまったコウノトリ。すべてが変わってしまった。コウノトリは家を捨てて避難していった人々を見送った。荷物を積んだ車を黙って見送りながら、コウノトリは「人間も渡り鳥になっちまったのかい…?」と不思議に思ったに違いない。村の家々の窓は十字に板が打ち付けられた。まるで村全体が大きな墓場になってしまったみたいだ。解体された農家にはレンガづみの煙突だけが多数残り、今となってはそれは薄気味悪くそびえ立つ記念碑になってしまった。しかし、そのただの一本にも、鳥の巣はできなかった。

 もう湖には行けない。その代わり、僕はよく他のいろんな所へ行く。僕の知らないところ、つまり「非汚染地区」へだ。多分これはいいことだと思う。いろいろな土地、いろいろな人と出会えるからだ。僕には新しい友だちもできたし、新しい通りにも慣れた。しかし、心から楽しむことはできない……。

 でも、あの思い出は、僕をいつも深い愛情で包んでくれる。それは、僕が同学年の何人かと一緒にドイツに行く機会に恵まれ、絵のように美しい村の、親切なブリギッタさんの家に滞在した時の思い出だ。彼女は僕のことを息子のように愛してくれて、いつもおいしい料理をお腹いっぱい食べさせてくれた。ブリギッタおばさんはロシア語がわかり、僕と喜んで会話をしてくれた。彼女は歴史の話を面白おかしく話してくれたりもした。僕がうるさく何かをせがむときも、彼女は、僕のカーチャおばあちゃんみたいにほほ笑みを絶やさなかった。いつもは明るく陽気なブリギッタおばさんであったが、唯一度だけ、僕が犬と遊んでいるとき、なぜか彼女は黙って僕を見つめ、泣いていた。

 暖かい海、雪をかぶった山々、エキゾチックな村、飾り立てた船が行き来する大きな川。僕はいろんなものを見た。僕はたくさんの町を訪れ、たくさんの人と出会った。しかし、どうしても僕の目の前には静かな湖がうかんでくる。鏡のように透きとおった水。青々とした柳。そして道には、長い足の「哲学する鳥」がいる。

 またあるとき、急行列車で僕を別の町につれて行ってくれたりもした。そこにはきれいな空、きれいな空気があるけれど、そこは僕のふるさとではない。列車の窓際に立っていると、向こうの空から鶴がこちらに飛んでくるのを見た。彼らは事故について何か知っているのだろうか……。

 皆さん、僕たちは一体何をしてしまったのでしょうか。神様、生きる力を与えてください。

 罪深い僕たちを許してください。

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子供たちのチェルノブイリ

Author:子供たちのチェルノブイリ
昔、こどもたちのチェルノブイリの作文集を選ぶボランティアをしました。この時の衝撃は今も心に残っています。
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 ohanamoon@gmail.comまで

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